行ってきました、韓国レミゼ!

「韓国にはまず行かないだろうし、ジュンモさんも多分もう日本でバルジャンをやることはないだろうから」と思って清水マリナートに初お泊まり遠征を決行したのが今年の9月のことでした……(^^;)。
……だ、だってジュンヒョンがジャベールやるっていうから!


行ってよかった~~~~!
韓国に行くのは生まれてはじめて……というか、仕事以外で海外に行くのは、20年ぐらい前にツアーで中国を観光しただけだったので、初韓国であると同時に、生まれてはじめての海外フリー観光旅行でもありました。初めての国でフリーツアーだなんて、今回誘ってくれましたフォロワーさんがいらっしゃらなかったら絶対行けなかったです。改めてお礼を。ありがとうございます。
日程は、12月8日に飛行機でソウルに向かい、ソウルのブルースクエアで公演しているレミゼをソワレで観劇。翌9日もレミゼをマチソワ、10日は余裕があったら観光して帰国というスケジュールでしたが、10日は完全に燃え尽きた私がなかなか起動できなかったせいで、空港に隣接するロッテモールで買いものをしただけで終わってしまいました……。

ちなみに同行者さんは9日の午前に大学路に行ったけど(レミマチネは午後3時始まり)、私は疲れて寝込み、ホテルでゴロゴロしていたので、私はまさにレミ見てレミ見てレミ見て帰ってくる二泊三日の初韓国旅行でした。どう考えても「観光」旅行じゃない気がする……(^^;)。

韓国では、ダブルキャストはバルジャン、ジャベール、ファンテーヌのみ。(ただし子役はトリプル)。
観劇した3回のキャストは、「バルジャンはまずジュンモさんを見ないと。ジャベールはもちろんジュンヒョンで。でもせっかく行くのだから、もうWキャストのもう一人も見たいよね。ファンテーヌはできれば二人とも見たいけど無理はしない」というコンセプトで選んだところ、前から順にバルジャン、ジャベール、ファンテーヌが

8日ソワレ……ヤン・ジュンモ、キム・ウヒョン、チョ・ナヨン
9日マチネ……チョン・ソンファ、キム・ジュンヒョン、チョ・ジョンウン
9日ソワレ……ヤン・ジュンモ、キム・ジュンヒョン、チョ・ジョンウン

お目当てのジュンヒョンとジュンモさんそれぞれ2回、しかも締めの3回目が一番のお目当てのふたりの対決と、ファンテーヌも両方見れるという、自分としてはすごくいい感じに取れたと思ってました。
実際、8日には、のすごく進化したジュンモバルジャンを見ることができ、これだけでも来て良かった!と大満足したのです。

が。

翌日に見たソンファバルジャンのあまりの上手さに唖然。
ちょ、こんなめちゃくちゃ上手いおじさんがすぐ隣の国にいるなんて聞いてないよー!!!!

さらに観劇後、あまりの感動に目を回しながら、「ソンファさん凄い!めちゃくちゃ上手い!めっちゃ感動した!」って騒いだところ、同行者さんの知り合い(劇場でほぼ偶然出くわした)が「ソンファさんの出待ちしましょう!」の提案され、急遽出待ちを決行。これが大成功。人生初出待ちでサインいただいて握手までしてもらいまして。そこで「あっ、私ソンファさんのチケット、1回しか取ってない!」と気付きまして。

……気付いたら「ソンファバルジャン、もっかい見たいからまた韓国来ます!」って呟いてました……(^^;)

というわけで、観劇時系列的には逆ですが、ソンファバルジャンの感想から。

ソンファバルジャン、上手いっ!!演技の緻密さが半端ない!

出だしの仮出獄証を受け取るところでは、心を完全に鎖し切ったように正座で微動だにせず、「俺はジャンバルジャン!」と叫ぶところの暴れぶりは、看守たちが本気を出すほどの激しさ。
外の世界に出た時のほっとした顔、そこからの冷たい仕打ちに恨みを増す目の暗さ。幼い少年のコインを奪うときは、少年に仮出獄証を見せつけて追いはらいながら、コインを拾うものの、「俺はあんな幼い子供から金を奪うほど落ちぶれたのか」というような、虚しさの漂う顔を一瞬する。しかしこれがまた一瞬だけで、すぐもとの暗く淀んだ顔になるんですよ。その流れもまた上手い!

司教に招かれ、食事を振舞われ必死で食べながらも、目は高価な食器をちらちらと追い続ける動きと目の昏さ。司教に偽りの感謝をする時には、下心を隠すかのようにしっかりと丁寧に挨拶し、そこから食器を盗む時の素早いこと!

捕まって、司教が「ウソ」をついて助けてくれても、バルジャンは頑なに正座したまま司教の方を見ようともしない。しかしその両手に銀の燭台を握らされ、司教が一度も振り返ることなく立ち去ると、彼は手にした食器を司教に返しかけた姿勢のまま、愕然とした顔で動けなくなる。
そこからの独白の激しいこと……!

かつて巨匠バーンスタインは、「歌と音楽によって物語が進むのはオペラ。物語(芝居)が進行した結果、登場人物の心境や感情を歌として表現するのがミュージカルである」と述べたそうですが、ソンファさんの独白を聞いた瞬間、「これがバーンスタイン先生の言っていたミュージカル……!」と震えました。

激しく歌い上げるべきところは、オペラ歌手もかくやの安定した音程で大きく歌い上げ、台詞のように荒ぶらせるべきところは、しっかりと台詞として叫ぶ。「どっちかしかやらない/できない」ではない。どちらもフルに使い分ける。その全てが自然なので、バルジャンの心の中にうねる激しい感情――羞恥と驚愕、反抗と言い訳、そして悔悟と改悛が、ダイレクトに届いてくるんですよ!

十九年。そのあまりにも長い投獄のため、固い岩のように凝り固まった深い深い恨み。その深い恨みに、司教の大きな優しさと赦しが、小さなひびを入る。揺らぐ心。そして嘆きと叫びの中から、まさしく新たな人間が生まれ変わってあらわれる。

この激しく血の迸るようなバルジャンの再生を、ソウルのブルースクエアで見てこれました……!
ファンテーヌが娼婦に身を落としたと知った時の演技も素晴らしかったなあ…。失敗をしたことに、とてもストレートに愕然としている。もう二度と過ちを犯さないよう注意してきたのに!という心の悔恨と、なんとかせねば!という瞬時の判断が素晴らしかった。ンちなみに日本では2回目で成功する馬車持ち上げは一回で成功。

「Who am I」も、心の葛藤と揺れ動きが、手で触れているように伝わってきました。瞳のゆらぎ、焦ったように手を振るしぐさ、そわそわした歩き方。そのひとつひとつの揺らぎに、この人は性根は悪い人じゃないけれど、そもそもはごくごく平凡な人間なので、すべてを失いかねない決断を前に、「嫌だ、俺はまた逮捕なんてされたくない」と、本気で迷っているのだな……と伝わってくる。

しかし、徐々に心が定まるにつれ、その足取りが、手の動きが、目の輝きが、力強く、確かなものになる。そして裁判所には実に堂々とした足取りで乗り込むのですが、しかし「俺は24601!」と叫ぶ時に、とても苦しそうな顔をするんですよ!このリアルさがたまんない……!
対決も真っ向勝負の真剣勝負!かなり殺る気満々のジュンヒョンジャベに対し、ソンファバルジャンも最初から本気!首を絞めても落ちなかったとわかると、奪った鎖を拳にまきつけ、全力でジュンヒョンジャベの顔面をパンチ!まさしく「刺し殺しても俺はやるぞ」だった…。

コゼットとの出会いは、最初は「迷子の子かな、送ってやろう」ぐらいの意識だったのが、コゼットの名を聞いたところでスイッチが入るのが非常に明確。テナルディエ夫婦に対しても、一見押されているように見えて実は一歩も引いておらず、いつの間にか擦られた財布も、しっかり取り返す逞しさ。「もともとは貧しい農夫に過ぎなかった」というラインをしっかり守りつつ、しかし19年の投獄に耐え抜いた強さとしたたかさ、ハイスペックさを出す、この絶妙なさじ加減がまた凄い!

ところであっしめ、さっきからソンファさんの演技ばっかり褒めてますが、歌も凄くいいんですよ……!実はソンファさん、よくよく聴くと、譜面と違うリズムで歌ってることがあるのですが、しかしそれがちっとも不自然じゃない。まさに感情の発露が譜面を支配し、音楽として新たに生まれ出てた!というようなみずみずしさ!

声も非常に響きが豊かで、その響きがしっかりとブルースクエアの中で反響し、生オケの音と混ざり合っており、ほんとに素敵!私がいつも生オケの生舞台で聞きたいと切望している、重層的なハーモニーが生まれていて、ほんと凄かった…。

パリでのジャベールの介入は、フラフラよろめいて膝をついていたバルジャンを、何も知らないジャベールが腕を掴んで助けおこすという流れで、日本版(立っているバルジャンの肩の埃を軽く払う)よりもドッキドキ。この時の恐怖の表情もよかったなあ。またこの時のジャベールが冷酷さの際立つジュンヒョンジャベールなんで、恐怖もひとしお。この後のプリュメ街のシーンでソンファバルジャンは、「もう大人だから全部教えて!」というコゼットを、かなり高圧的な態度でたしなめるのですが、この時の恐怖を考えれば、何が何でも娘を外には出したくない、外のことは教えたくない、とにかく早く逃げたいという気持ちもむべなるかな。

そしてワンデイモア!ソンファバルジャンのワンデイモアは、不安と怖れと、それでも明日に進まねばならぬというワンデイモア!そうなんだよ、ここではバルジャンは不安からイギリスに逃げようとしていたんだから、こうなんだよ……!バルジャンにとっては不安と懼れの歌なんだよ!

ジュンヒョンジャベール(超イケメン)の方は決意と殺意のワンデイモアだったので、この対比も実に素晴らしかったです。

第二幕。娘に恋人ができたと知った時の表情がめちゃむちゃリアル。めちゃリアル。ジュンモバルジャンが「娘に恋人が出来て一大事!とは思っているけれど、具体的に何がどう一大事なのか実はあんまり想定してない」、どこかのんびりしているバルジャンだとすれば、ソンファバルジャンは分かってる。完璧に分かってる。分かっているので超焦りまくり。なんとか一生懸命落ちつこうとしているんだけど、内心動揺しすぎてガクガクしているのがダダ漏れ状態。お父さんしっかりして~!。

そんな娘のこととなるとアタフタガクブルなソンファバルジャンですが、バリケードの対決では、荒々しさ全開!なんとか食い下がろうとするジュンヒョンジャベールを、力と信念で叩き出す!

そしてブリングヒムホーム。なんという大きな、大きなクレシェンドとデクレシェンド……!

手の平ほどの大きさの、囁くような小さな祈りからはじまり、その祈りは徐々に大きくなり、マリウスを包み、バリケードを柔らかくつつみ、そして天へとやわらかく、大きく伸びてゆく。天へと伸びたその大きな祈りは、再び徐々に小さくなり、最後は静かに祈るバルジャンの手に戻ってゆく。

こんな柔らかく美しく、哀しいブリングヒムホームは初めて聞いた……!そうだよね、バルジャンはここでマリウスを助けても、自分は娘と別れることになるんだよね……。自分には哀しみと別れしか訪れないことを分かった上での、「彼を家に帰してください」なんだよな……。

それとソンファバルジャンは、このバリケードの行く末を最初から分かって気がします。嘆きのうちに、他の学生達までは助けることはできないと分かってしまっている。分かっているのだけど、本当は助け立ったという深い哀しみの滲む背中!

「市民は来ない……」とアンジョルラスが歌った時、学生達をみつめる目。陥落したバリケードを見つめる背中。そこに滲み出る嘆きと無力感。あんな悲しい背中、はじめて見た……。

このように深い深い悲しみに沈むのだけど、マリウスが生きていると分かると、必死の逃走。そして下水道出口の対決では、目の前に現れたジャベールを、全力で吹っ飛ばす勢いで信念を叩きつけ、退ける!

気迫によろよろっと退くジュンヒョンジャベールを後に、振り返ることなく猛然と去って行くソンファバルジャンのブレの無さよ……。ほんとにこの人はマリウスただひとりのため、つまりは娘のためにバリケードに来たんだなあ……。

自らの正体をマリウスに語る時も、ほんとに寂しそうな背中をしているんだよなあ。彼にとって、コゼットを育てることはあくまでも責務なんだけど、そこには既に責務以上の愛があるってのが、哀しみとともに伝わってきて、ほんと切ない……。

そうなんですよ、ソンファバルジャンにとってコゼットは、あくまでも自分の娘ではなく、預かった娘。けれど預かったからこそに大切な、愛する宝物って感じなんですよ。

こときれる直前、娘に向けた明るく澄んだ穏やかな微笑みは、名残惜しそうながらも、安堵に満ちた告別の微笑み。ウェディングドレス姿の娘を前に、ようやく未来に娘を託すことが出来た安堵感に満ちあふれており、最後召された後のほっとした微笑みとあいまって、ようやくこの人は全ての重荷から解放されたんだな……と、見ていてこっちも安堵感から泣きそうになるフィナーレでした。平凡で危機にうろたえてしまったりもするけど、慎ましく芯が誰よりも強い、心優しいジャン・バルジャンだった……。

というわけで、もう一回見てきます。2月の予定です。

見た順番は逆になりますが、つづいてジュンモバルジャンの感想。

進化した~!!!日本で見た時と全然別!神への祈りが明確になり、娘を溺愛するパパ要素と、神の前に首を垂れて祈る求道者のバランスが断然よくなった!

そしてなにより、強い!日本の時は、優しさが全面に出ていて、ジャベールと戦う時もいたしかたなく戦っていた感じだったけど、今回は戦う時に「やる時はやる!」という強さが出て、より男らしく雄々しく強いバルジャンに。さらに娘が超反抗期のおてんば娘(しかも肉食系)なので、言うことをきかない娘に苦悩し苦労する姿も見れました。よかった~!素敵だった~!

細かいところもさらにブラッシュアップ。特に「独白」や「Who am I?」では、決意を示すところの強さ、決然とした佇まいがパワーアップ。逆にジャベールと対決する時は、ソンファバルジャンよりも戦い慣れてないという雰囲気で、ジャベールに対し大分苦戦気味。特にウヒョンジャベール(超大暴れな体育会系)との対決は、かなりバルジャンがピンチって感じでした。

コゼットと森の中で初めて出会う時の優しさも、より優しく丁寧に。日本版では、小さな幼子が森で震えているのをみて、後先見ず飛び出してしまった感じでしたが、今回は可哀想な子供に対する「助けてやらねば」という気持ちもちゃんとキープしつつ、しかし一番の使命はコゼットを救うこと、という部分はブレておらず、より明確な演技に。

バリケード陥落後、この結末を予測し、覚悟しつつも悲しんでいたのがソンファバルジャンだとすれば、ジュンモバルジャンは心のどこかで奇跡を待ち望んでいたバルジャン。陥落したバリケードを見上げる背中からは、かすかな希望を撃ち砕かれた悲しみが滲み出ていました。

コゼットはあくまでも養女である、というラインを守っているのがソンファバルジャンなのに対し、ジュンモバルジャンは日本の時から、コゼットを本当の娘のように可愛がっていましたが、韓国版でも方向性はそのまま、さらにブラッシュアップ。いまわの際にパパじゃないと告げる時、ものすごく悲しく辛い顔をするのですが、辛そうな顔のあと、ふっとほっとしたような、安らかな顔をしてこときれるのですよ!これは良かった……!

泣き崩れるコゼットと、コゼットを抱きしめるマリウスを見つめる瞳の暖かく優しいこと……!ほんと、日本でジュンモバルジャンを見て「良かった!」と思った方みなさんに、この韓国でパワーアップしたジュンモバルジャンを見てほしい気持ちでいっぱいです。

つづいてジャベール!
ウヒョンジャベール、めっちゃ可愛い~!!!!!すごく可愛い!可愛いんだけど、なんで可愛いのか謎過ぎる!

なぜってウヒョンさんのジャベールは、背は優れて高く、ラグビー選手かバスケット選手かという精悍で逞しい体格で、いつも悪に対し激しい怒りを見せており、男らしく凛々しい顔立ちとあいまって、まさに法と正義にすべてを捧げた熱血体育会系鬼警部なのですよ。

こうきたら、普通は「かっこいい」とか「イケメン」という結論が続くはずなのですが。

可愛いー!めっちゃ可愛い!愚直で不器用で可愛い!例えて言うと、大型犬っぽい可愛さでした(ツイで動物のお医者さんのシーザーっぽいってコメントがあったけど、私もそう思いました。「俺はやるぜ俺はやるぜ」とか「嫌だ俺はケンカするんだ」って台詞がめっちゃ似合うジャベールだった……)

そんなウヒョンジャベの自殺は、「信じてきた神(法)に見捨てられ、ブチギレながら自殺」という雰囲気。自分自身に怒りと叩きつける壮絶な自殺だったのですが、川を見た一瞬、気弱く自嘲めいた、目が恐怖に凍った笑みを浮かべるんですよ!そして次の瞬間にはまたブチギレるのですが、このギャップもまた、ものすごくあざと可愛い……!こんなに「可哀想に……死にたくなかったろうなあ……」と同情できるジャベは初めてですよ!

ていうか、このジャベールは川に身を投げても助かったら気持ちを入れ換えて生き直せますって!だから誰かウヒョンジャベを川から救いあげてプリュメ街55番の門の前においてきて!そしたらきっとバルジャンが拾ってくれるから~!

対しジュンヒョンジャベですが、あまりにも非のうちどころのないイケメンぶりに唖然とした……!

とにかくイケメン。すべてがイケメン。非の打ち所がどこにもない!(参照例:岡ジャベは美しすぎて「美しすぎるでしょうがあああ!」とツッコミたくなるジャベールなのに対し、ジュンヒョンジャベールはツッコミどころがどこにもない)

その男らしいイケメンぶりとあいまって、ぱっとみると冷静冷酷な雰囲気なのですが、実際には熱血さに湿度が加わって、粘着性の高い雰囲気に!

ただあまりにも完璧なイケメンなので、その湿気が「水も滴るいい男」の水分的な雰囲気に見えました……。フォロワーさんの知り合いが「何ですが、あの入水する前から水が滴ってるいい男は!」と謎の逆ギレを起こしていたそうですが、むべなるかな。

あと「ジュンヒョンのジャベールはダークヒーロー」って書いてた方がいたけど、まさにそれ。粘着性的なところもあるのだけど、どろどろとした感じではなく、「自分が間違いではないと明かすためなら地の果てまでも追いかける」という粘着性。執念といった方がいいかも。正義に対する執念が強すぎてダークヒーロー化した、という感じで、とにもかくにもかっこいい。

その過ちが正せないとわかると、彼は決然と、ただしバルジャンをどこかで呪いながら自裁する。きっとこのジャベは、事切れる寸前、暗いセーヌの水の中で、バルジャンを逮捕して自分の正しさを証明できた夢を見て死ぬんじゃないかな……と思えるような、深い深い執念のジャベールでした!あとものすごくイケメンだった。

スターズは、ふたりともめっちゃカッコ良かった~!!!向こうではスターズのあとにショーストップレベルの拍手喝采が起きるのですが、これは拍手するわ~!!!ふたりともほんとイケメンで、あなた方こそが輝ける星ですよ!という輝きぶり。

ふたりの違いがよく見えるのがバリケード。ひたすら俺は正義!と無邪気に信じているウヒョンジャベは、正体がばれると大暴れして抵抗、学生達にキレる時も「ふっざけんなこのガキ共が!」という勢いなのですが、エポニーヌが亡くなった時は、幼い少女が命を落としたことに愕然とし、見る間に意気消沈。その後バルジャンが現れるとまた大暴れするものの、ジュンモバルジャンの厳しく決然とした赦しに触れると、ガタガタっと崩れ、よろめくようにバリケードから退場。

韓国レミでは、ジャベールはガブローシュの遺体の目を閉じてやるのですが、その時のウヒョンジャベは既に泣く寸前。下水道出口では、なんとか残った意地をかき集めてバルジャンの前に立ちはだかるのだけど、ジュンモバルの、自分の命を投げ出してても娘の愛する人を守り通す!という必死の前にあえなく敗北。「俺はどうして間違ってしまったんだ!俺は正義のはずだったのに!」と泣き、嘆き、怒りながらの自殺でした。

対し執念の湿度は高いけど知性はかなり高く、熱血でありながら冷酷さを持つジュンヒョンジャベは、正体がバレた時も結構冷静。ただ隙を見て本気で逃げようとするので、ウヒョンジャベよりも手荒く反撃されてました。膝を裏から蹴られて崩れる姿も見栄えのすることよ……。エポニーヌの死に対してはあまり表情を変えないのですが、バルジャンが現れると、突如敵意をバリバリに剥き出しに!自分を赦すというバルジャンの言葉には耳を貸さず、「貴様は悪人のはずだろう!」と狂気をはらんだ目でバルジャンに詰め寄るので、ソンファバルジャンにほぼほぼ腕力で叩き出されてました……。そしてジュンヒョンジャベもまた、「そんなこといっても後ろから撃つつもりだろ?」って顔して振り返るんだよな……。

ジュンモバルジャンはソンファバルジャンよりも腕力がやや劣るという設定なのか(ファンテーヌの病室での対決でも、ソンファバルより大分手こずってた)、ジュンヒョンジャベをバリケードから追い出すのにも、大分手こずってました。日本ではジャベール達をほぼ目力だけで無力化したジュンモバルジャンの赦しの瞳が、即座には通用しないあたり、ジュンヒョンジャベの闇の深さを感じました……。

ただ、バルジャンの赦しの力はじわじわと効いてまして、ガブローシュの目を閉じさせるところでは大分目がうつろ。下水道出口では、むしろウヒョンジャベよりもあっさりバルジャンを通し、「悪を赦してしまう自分など生きている価値などない」とかばかりに自裁。悪を赦さぬ執念が自分に向かい、自らを破壊してしまった自殺でした。水に沈む直前の苦悶の表情が切ないですよ……。

他のキャストは、ファンテーヌ以外はシングルだったのですが、8日ソワレはマダムテナルディエがアンダーキャストのホン・グムダンさんで、ちょっと得した気分。ホンさんは私の好きな「背が高く痩せててキンキンケンケンしてる」マダムで、テナルディエ役のイム・ギホンさん(小柄)とよくお似合いでした。

……が、やはり本役つよい。本役のパク・ジュンミョンさんの面白恐いことよ……!イムテナルディエとの息もぴったりで、おふたりとも、「力無きレミゼラブル達にとって、恐怖となる悪のレミゼラブル」である部分と、コミックリリーフの部分のバランスがとても良く、笑える部分は爆笑しつつ、恐い部分はゾッとしつつ見てこれました。

そしてファンテーヌがすごくいい!8日に見たチョン・ナヨンさん、ウエストエンドで初めてアジア人としてファンテーヌを演じた人と聞いて、超納得。地声なのにキンキンせず、裏声ではないのに高音が安定しており、そしてなにより哀切な「夢破れて」でした!

Wキャストのチョ・ジョンウンさんも歌の芯がとても強く、しっかりと壁からの反響音も聞こえ、なおかつ恋しか知らない女の哀しみにも溢れており、じんわりと悲しくなりながら聞いてきました。

パク・ジヨンさんのエポもかわいいんだな~!逞しくって健気で可愛くて。歌も力強い!オンマイオウンが、「あたしどうせフラれるだけだし」というやけっぱちソングじゃなくて、「彼が好きなの。どうしようもないの」という切なさと、パリの一番の下層で生き抜いてきた逞しさの同居しており、彼女の生きてきた不幸な短い――だがただひとつの恋を守り通した人生が、垣間見える一曲となってました。

ガブローシュもかわいいし逞しい!トリプルキャストでしたが、二人見てこれました。

……すみません、キャスト表の写真にはアルファベット表記があるんですが、ちょっと解像度が低くて見えませんでした……(ハングルは今合成母音をやってるところなんで、自力でなかなか読めません……すみません……)。8日ソワレと9日ソワレは二文字姓の子で、9日マチネはクァク君でした。

アンサンブルも含むキャスト全体にも言えますが、韓国レミゼは貧しき「レ・ミゼラブル」としての逞しさ、強さ、したたかさが全体に感じられ、時代考証を脳みそのバックグラウンドで常に考えちゃってる自分としては、「そうだよな、ほとんどの登場人物が貧しさの中で生き抜いている人物なのだから、逞しさとしたたかさがあるはずだよな!」と、非常に納得。

同じ「リアルさ」は「リアルさ」でも、「現代人である観客が(当時はどうだったとかを抜きして)感じるリアルさ」と、「当時の社会はこうだったという考証を積み上げて産み出すリアルさ」の二種類があるように感じるのですが、韓国レミゼはかなり後者寄りのつくり。

それは学生達にも言えて、ユン・ソホのマリウスも、ミン・ウヒョクのアンジョルラスも、他の学生キャストも「当時は学生の革命が成功し政権が樹立される可能性が十分あった。しかし滅多に成功はしない」という、19世紀フランスの独特のラインをいい感じについていて、時代考証大好きなあっしめ、大満足。

そんな訳で、2月後半にまた見てきます。ソウルに寒波が来ませんように!
キャスト一覧ですが、ハングルが読めるようになったら追加します(^^;)

行ってきました、韓国レミゼ!”に関する2件のコメント

  1. Julie

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    はじめまして!2013に初ソウル、その後現地でアイドルの出るミュージックに行くようになり、いつの間に韓国ミュージカルの魅力にどっぷりのJulieと申します。ジュンモバルジャンの帝劇レミゼにもどっぷりしました。
    12/8のソワレ、私もブルースクエアにジュンモバルジャンを観にいっていたので、すごく詳しいレポでしっかり復習させていただきました。テル妻の細めの方アンダーだったんですね!とてもよくて気に入りました。森クミのテル妻風とは違う魅力たっぷりでした。
    9日はフランケンのマチソワを選択(ウンテさんもチサンさんも大好きなので)で泣く泣くジュンヒョンジャベを諦めたので、うっとりレポを読ませていただきました。そしてやっぱりソンファさんでもみなくちゃ!です。10日ソワレでもう一度ジュンモさんをみて帰国の一人3泊4日渡韓でした。
    私もハングル??ですが、こちらでたっぷり観たレミゼ、セリフがハングルでもすーと言葉が入ってきて、やっぱり言葉をわかりたい!と思い直したところです。
    このあと年末に一度と一月の後半に一度渡韓予定です。まいこさんのレポ本で、やっぱりレミゼ中心でスケジュールしよう!とフランケンに後ろ髪引かれながらも決心がつきました!

  2. まいこ

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     Julieさん、承認とレスが遅れてほんとにほんとにすみません!通知を見逃してました……。
     レポを気に入っていただけて嬉しいです。私も「やっぱり分かって聞きたい!」と思い、年末から急に韓国語をはじめました。いまなんとかハングル文字が入力できるようになったところです(^^;)。話すのは「私は日本人です」ぐらいかな……。
     私は次回2月後半に、またまたレミゼばっかり二泊三日ツアーで行ってくる予定です。今度はソンファさん2回ジュンモさん1回の予定なんですが、フランケンがめちゃめちゃ好評なんで、1回見に行こうかな……と、ちょっと迷ってます(^^;)。
    でもジュンヒョンジャベもほんとにかっこいいですし、ウヒョンジャベもかっこいいし、ほんと迷います。
    今回はこちらの見落としでレスが遅れてしまいましたが、これにこりず、また見ていただけたら嬉しいです。

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